【完】【短編集】先生、"好き"を消せません…



「本日は井上夏未さんにお越しいただきました」

「こんにちは、初めまして」





いつもは聞き流すニュース番組。


でも今日はなぜだか目を奪われてしまった。





「こんなことをお聞きするのは大変恐縮なのですが…井上さんは自殺経験がおありとのことですね」

「はい。高校生の時です」

「その時のこと、お伺いしても?」

「あまり良いことじゃないと思うんですが…高校生の時、教科の先生とお付き合いをしていたんです。

周りには隠したまま、そして気持ちをなかなか伝えられないまま彼は病気で亡くなりました。
それで彼のあとを追おうと屋上から飛び降りたんです」

「…一命は取りとめたんですね」

「先生に追い返されちゃいました。
ちゃんと人生を全うしてこいって」





幸せそうに笑う井上さん。

きっとこの人は先生を好きになったこと、一つも後悔してないんだろうな。


大事な人がいなくなってからも、その人のために生きようとしている。



強い想いと心を感じる。



私は…どうだろう。


センセのことを…好きになった。


それでも気持ちは伝えさせてもらえなくて、今落ち込んでる。



こうなることがわかってたとしたら…


センセのこと好きにはならなかった?

ずっと教師と生徒のままだった?



ううん、そんなことない。


このセンセの優しさを知って、好きにならない方がおかしい。


きっともう一度、私はセンセに恋をする。