「やった。
一緒に行ってくれるって」


側で一部始終を見ていたまきちゃんを振り返ると、彼女は呆れた顔で溜め息をつく。


「そりゃ断らないでしょ。
サチは一応彼女なんだし、」


一応ってところがグサッと胸に刺さるけど、この際そこは気にしないことにする。


このちょっぴりクールなまきちゃんは私の幼なじみ。
しっかり者だけどその分心配性で、私と小林くんがお試しで付き合うのをあんまり良く思ってなかったりする。


「チケット代もサチが自腹切ってるんだから」


私は慌ててまきちゃんの口を塞ぐ。


「それは内緒だってば!
小林くんには、懸賞で当たったことにしてあるんだから」


「いじらしいを通り越してバカ。
金づるだと思われても知らないからね」


まきちゃんは廊下から教室の中を覗くと、小林くんを遠目から見てつぶやく。


「ほら、また一緒にいるよ、あの子。
やっぱりあの二人デキてるんじゃないの?」


まきちゃんの視線の先を見なくても分かる。
小林くんがいつも一緒にいるグループには女の子が一人混じっているのだ。