放課後の下駄箱で、私は深呼吸すると。
かかとを引っ張ってスニーカーを履く小林くんの背中に向かって言った。


「好きです」


小林くんは委員会が同じで喋るようになった、隣のクラスの男子。
口ベタで不器用だけど優しい。
そんな彼のことが、私は好きだった。


「んあ?」


小林くんは間抜けな顔でこっちを振り返ったかと思うと、しばらくしてプッと笑って私の頭を小突いた。


「何、冗談言ってんだよ」


分かった、罰ゲームだろ。
なんて辺りを見回す小林くんの制服の裾をぎゅっと掴んで、私は顔を見上げる。


「カッコつけてもカッコつかないとこも。
お調子者で、くだらないことに一生懸命なとこも」


「それちょっとバカにして…」


「とにかく、小林くんのことが好きなの」


「───そりゃ、どーも…」


小林くんは少し赤くなった鼻の頭を擦る。


「でも、芦田のことそんな風に見てなかったし。
付き合うとか、急には考えられないっていうか…」


すぐさま断られてしっかり落ち込んだものの。
女の子として見てもらえてないのは分かってた。
素直に引き下がるなら、告白なんてしてない。


「お願い、1ヶ月のお試し契約でいいから付き合って下さい!」


私は目の前でパンッと両手を合わせた。