一面に広がる焼野原。
 遮るものがなくなった風が、焦木の臭いを運んでくる。
 ただ、茫然と立ち尽くした。
 焼き尽くそうとする、燃え盛る炎を見たのなら、また別の感情が胸に生まれていたかもしれない。
「突然の襲撃で、金品を奪われ、火を放たれて……」
 怒りと悲しみの言葉。
「協力します、再び家の再興を!」
 希望の言葉。
 それらはすべて耳を通り抜け、何も残らなかった。
 ただ心にあるのは、言いようもない虚無感。
 緑豊かだった大地は、ほんの一時でなくなった。
 大事なものを総て失い、目的も失った。
 それからは、生きるために働いた。
 もともと、森林の国ポイコニーで材木商を営んでいた豪族の跡取りとして育てられた。
 幼い頃から自分の身は自分で守れとばかり教え込まれた武剣術と商家を継ぐための教養と勉強は、大いに役立ってくれていた。
 クスイの国にたどり着き生活していく中で、過去の虚無感を忘れかけていたのに。
 彼女が思い出させてくれた、悲しい出来事。
 そして、今の生きるための目的を。
 目先のことだけでなく、未来の先のために。