緋彗くんの言葉通り、11月の冷たく乾く風は頬に当たって流れていく。
「あたしも冬の方が好きかなー。
ほら!
ジングルベルの歌とか流れる街をさ!
こう、歩くのが好きで!」
「いいねー。
あとイルミネーションとか?」
「うんうん!
あー、早く冬来ないかなぁ。
でも彼氏いたらなーって考えるともっと楽しいんだろうけどー」
「はは。同感」
「いやぁ緋彗くんはすぐ彼女出来るじゃんー?」
「まぁね」
「うわあ……言い切るねぇ」
「でも好きな人と彼女がイコールにならないから難しいよ」
「えっ……」
「ん? そのまんまっ。
はい、駅に到着しましたー」
上手いタイミングで駅に着いてしまえば言及出来ず、緋彗くんにお礼を述べて改札をくぐる。
「そのまんま……ってことは好きな人いるんだね、緋彗くん……」
片道十五分程度の電車に揺られ、そのことばかり考える。
あの緋彗くんにさえ振り向かない?
らしい女の子とは如何程……
考えてみてもその答えが出そうにはないけれど……
薄いモヤがかかったような気持ちが自分の中の存在したことに気付いてしまった。
こんな沢山の感情の総称を人は……
恋と呼んだりするのでしょうか……?
*
「や、やややっぱりもう一回確認……」
「大丈夫!
あれだけ練習したじゃん、ね?」
衣装が完成した翌日から何度も何度も何度も。
リハーサル漬けの日々を繰り返し。
今日はいよいよ当日。
セリフは……一応頭に叩き込んで刷り込んだつもりだけど……。
万が一ということを考えると胃がキリキリしてくる……。



