そして出番がやってきた私は足取り勇ましくステージまで進む。
大丈夫、大丈夫。
努力した分はきっと無駄にならない。
無駄にしない。
練習で躓いてきたシーンもどうにかこなしていよいよ一番の見所のキスシーン。
一応今までずっとフリでやってきたし本番もフリの手筈だ。
だが……
自分の気持ちに気付いてしまった以上、フリであろうが緊張で構えてしまう。
「……ふぅ……」
マイクに声が入らない程度に細く息を吐き出した。
台本通りに進んでいく中、ステージ中心に設置されたセットに横たわる。
……今日で全部最後なんだ……
「何と美しい姫だ。
眠ってしまっているのか……?」
「白雪姫は魔女の毒リンゴによって死んでしまったのです……」
「そんな……嘘だろう?」
小人役の数名はそのセリフを言い終えたと同時に舞台袖へハケていく。
ステージに残った私と緋彗くん。
固唾を呑んで見守る観客席は静まり返る。
僅かに布地が擦れる音が聞こえて緋彗くんが屈んだ動作と共につれてきた微風。
私の鼓動の音は緋彗くんに聞こえてしまうのではないかというほどに膨らんでいく。
そして……
「……っ!!」
王子様は白雪姫にキスをした。
練習とは違う……一度だけの本当のキスを。
声を上げてしまいそうになったのを堪えた私を褒めてあげたい……
なんで……?
どうして本当にキスなんて……?
聞きたいことはセリフを追い越して山ほどあった。



