第14章【暴かれた過去】










小雨が降る天気。


堂々秀高校を囲む田んぼにとってはありがたい梅雨の季節。




カドクラはいつものように7時30分に登校していた。


職員室で自分で握ったおにぎりを食べ始める。






「カドクラ先生。」


話しかけてきたのは2年1組の担任と同時に学年主任を務めるムトウであった。


「あ、おはようございますムトウ先生。」


「6組の数学の中間テストの平均点、なんであんなに低いんですかねぇ。」


ムトウは朝っぱらから自分の担当科目についてカドクラに嫌味を言う。


「は、はぁ。」


食べていたおにぎりがおいしくなくなる。


「宿題をちゃんとやってくる生徒は少ないし。
困ったもんですよ。」


ムトウはお構い無しに嫌味を続ける。



「すみません。
今日のHRでよく言っておきます。」


「だから君にはまだ担任は早いと思ったんだよ。」



ムトウは最後にそう言うと自分の席に戻った。












『学年主任 ムトウ』

【自分の出世のことしか頭になく、気に入らない生徒や教師にはとことん嫌味を言う我が強い男】



カドクラはエンドーからそう聞いていた。


【次期教頭候補と噂され、今の教頭を勝手にライバル視している】

ともエンドーから教えてもらっていた。


『昔から俺もあいつとはウマが合わんのよ。
学年主任だから自意識過剰だし。
だからお前も何か言われても気にすんなよ。』



カドクラもエンドーの言葉通り特に気にしていなかったが、初めてムトウの人柄を実感した。



(でもムトウ先生の言う通り、
数学のテストの悪さは生徒達にはちゃんと喚起しておこう。)




カドクラは朝の職員ミーティング後、そう思いながら6組へと向かった。