「え~ダンゴムシというのはですね…」
3分の1の生徒が眠りにつくなか、
堂々秀高校体育館では始業式が続いていた。
(それにしても長い。
校長先生の話なんて前の学校ではなかった。
というより始業式は番長が仕切っていた。)
そんなことを思い出しながら、
カドクラは自分の出番を待った。
「長いですね。」
ふとカドクラの隣に座っていた男が話しかける。
「汗大丈夫ですか?」
カドクラはその男のハンパない汗を心配する。
「あ、ああ、すみません。
緊張しちゃって。」
「あ 僕はカドクラです。
よろしくお願いします。」
「そうか、まだ自己紹介してませんよね。
僕はムラマツと申します。
こう見えて29歳です。」
見た目はすごくイケメンなのに
緊張で少し固くなっているギャップが面白かった。
「それでは我が校に新しく赴任された先生方をご紹介します。」
いつの間にか壇上は教頭に変わっていた。
いよいよカドクラの出番だ。
「…続きましてその隣は
黒酢高校から転勤になった
カドクラ ケンイチ先生です。」
ザワザワッ
“黒酢”の名前が出た瞬間、
生徒達がざわめいた。
(やっぱり…)
カドクラはそう思いながらお辞儀する。
「え~カドクラ先生には
2年6組の副担任をお務め頂きます。」
カドクラがこの事を聞いたのは
ほんの数十分前。
ーーー職員室
「はじめまして。
今日からお世話になりますカドクラです。」
「あぁカドクラ君。
校長のアザクラです。
君には期待してるよ。」
「はい。がんばります!」
「君ね。2ー6の副担。」
「は?」
「黒酢で不良達に一目置かれたその手腕。
期待してるよ。」
ーーーーー
壇上で2年6組のほうに目をやる。
遠くてよく見えなかったが、
逆に生徒達の視線を感じる。
(正直最初の1年は
ただ単に教科担当だけだと思っていた。)
カドクラの本音である。
(でもまぁ副担任だから
そんな気負いしなくてもいいか。)
カドクラのポジティブシンキングである。
引っ掛かるのは2ー6の担任の姿が
朝から見えないことだった。



