電話を切ったひげ男がカドクラを見る。


「ああ、すんません。
カドクラさんでしたっけ?」


「はじめましてカドクラです。」


「俺はエンドー。よろしくお願いします。」


「よろしくお願いします。」


「カドクラさん、早いね。」


「なにがですか?」


「来るのが。まだ8時前っすよ。始業は8時30分なのに。」


「ひょっとして他の先生方はまだ登校されてないんですか?」


「だから始業は8時30分ですって。」


「はぁ。」


「今日は始業式だけだから。
まぁあと15分ぐらいしたらみんな来ますわ。」


「あの、校長先生もですか?」


「あいつは昔からたまにしか学校におらんで。
今日は来ると思うけど。」


「エンドー先生はこの学校長いんですか?」


「5年目。もう26歳ですわ。
ちなみにこの学校の卒業生です。
分からんことあったら俺に聞いてください。」



カドクラの1個上だった。


「カドクラさんは…」


「あ、僕1個下なんでどうぞ遠慮せずに。」


「あぁそう。じゃあカドクラは前はどこに?」


「黒酢高校です。」


「ハハハ。黒酢かい。よく生きとっなあ。」


「ええ、なんとか。」


「まぁ安心しやあ。ここはそういうノリの生徒達はおらんで。」


「朝練なんて久しぶりに見ました。」


「でもまぁ厄介なのは…」



ピリッピリッ

エンドーの携帯がふたたび鳴る。



「適当に座ってやあ。そのうち教頭来るで。

…おおジロウやんけ。朝っぱらからどうした?」





カドクラの不安はさらに増長したがとりあえず席に着いた。