「圭ちゃん元気?!」

いつも待ち合わせしてた駅で待ってると、案の定時間に遅れて現れた涼に呆れた。

「ちょっと~母親になっても時間にルーズってどうなん?」
「ごめん!高成と喧嘩になって、それを見てた千秋がギャン泣きして出遅れた」

両手を合わせて申し訳なさそうに謝る涼。
千秋くんが原因なら怒るにも怒れん。

「涼が遅れてくるんはいつものことやから何とも思ってないけど。さ、行こう!」

涼は「え~?」て怪訝そうに言うたけど、こうして二人で会えることが久しぶりやから笑えた。

久しぶりに見た涼は子供を産んだ親とは言えんくらい綺麗になってた。
妊娠前より細くなってるし、母親の顔をしてるけど旦那が旦那だけに垢が抜けて夫嫁って感じより夫人っていう雰囲気が漂ってる。

涼いわく相当な努力の賜物らしいけど、芸能人の嫁になるっていうことはそういうことなんやろう。
関係がなくても、それなりの身なりが必要とされる。
全ては愛すべき旦那のために。




「もう疲れたぁぁぁ」

久々の買い物やったんか、相当はしゃいだ涼は両手いっぱいに紙袋を持ってた。

好みが変わってなくて安心したのと同時に相変わらずな涼にあたしもテンションがあがって予想以上に買い物を楽しんでしまった。

最後に寄った近所のカフェで二人して足を投げ出して座ると重たい紙袋を足元に置いて冷たいアイスコーヒーを頼んだ。
歩きつかれて、風が心地いいのもあったからテラスで飲むことにした。

「涼の勢いに釣られて予想外の買い物してしもたわ」
「いいやん、そんな日も!あたしが一緒の時はそれもアリってことで」

一緒に遊んでいた頃と変わらん笑顔でそう言われてしまうと仕方ないなって納得してしまう自分がおる。

あたしがこんなに一緒にいて安心するのは涼しかおらん。
結婚して遠く離れて会えん時間が長くなると、なんか自分の胸の中がぽっかり穴が空いて、いつもの自分の調子が出てこん気がする。
やっぱりあたしには涼が必要で一番の友達やなって確信する。

「でも涼がおらんくなったから静かになったよ」
「え?寂しくなったって?あたしがおらんくなって寂しくなった?」

涼が冗談で聞いてきたけど、今のあたしには誤魔化すことができんくて苦笑を返した。

「謙吾くんはまだ帰ってこんの?」

察しのいい涼はあたしの顔を覗きこみながら尋ねてくるけど、その表情は心配した顔。

あたしと謙吾が遠恋してるのは涼が一番よく知ってるし、どれくらい会ってないんかも知ってる。
涼にだけは本音を話せてしまう。
それが一番厄介で安心するんやけど。