浅い眠りから覚めた秀海は、ぼんやりとした瞳を壁の時計へと向けた。
 時計の針は、午前6時を指している。
 2時近くまで飲んでいたことは覚えている。昔なじみの川原が、あの頃の仲間が今はどうしているだとか、咲楽がどんな奴なのかとか、色々と話してくれた。
 別れ際には、秀海の両手を握りしめ、咲楽を頼むと言われてしまった。
 川原という男は昔から、面倒見のいい奴だった。お人好しで、馬鹿正直で、優しい奴だった。
 その川原が担当していたアイドルタレント・結城咲楽の顔を思い出してみる。
 ちょっと日本人離れした、大きな瞳の彼は、少しのビールに顔を赤くして、ふにゃりと笑う男だった。
 そんな彼のマネージャーとしての日々が、今日から始まる。
 今日の彼のスケジュールは、雑誌の取材が2本と次のアルバムの打ち合わせ。時間は午後からで、マンションの下で車を待機させておけばいい。
 ここから咲楽の住むマンションまでは、車で20分。
 とりあえずシャワーでも浴びようと、秀海はベッドを抜け出した。