私の恋した誘拐犯【完】

「んー?」



どれにしようか迷う私に、たくちゃんは続ける。



「…男と同棲してんの」



水を選ぼうとしていた手が、ピタリと止まった。



あの日の夜のことだろうことは、言わなくても分かる。



「あ、あの人は、私のお兄ちゃんみたいな人で…訳あって同棲してるだけだよ」



止めていた手を再び動かし、ボタンを押した。



ガタンッと、ぶつかる音が響く。



「ま、確かにあの日も保護者みたいだったしな」



「うん」