私の恋した誘拐犯【完】

「………ちーちゃんが覚えてるかは分からないけど」



私の声に応えるようにして、洋くんは小さく口を開いた。



「ちーちゃんと、ちーちゃんのお父さんとは、昔から知り合いだったんだよ」




「…え…?」



「俺の父さんが本屋で働いてるとき、よく2人で本を買いにきてて。…俺もじいちゃんの手伝いしてたし、それでちーちゃんのお父さんと知り合ったんだ」



あぁ



覚えている。



パパが私の成績が気に入らないと、頭が良くなるように参考書を毎週のように買いに行った。



あのとき確かに、その本屋には優しそうなおじいさんとお兄さんがいたんだ。