私の恋した誘拐犯【完】

できれば何も聞きたくない。



「おい千織…!」



足早にたくちゃんの前を歩く私。



後ろで声を張るたくちゃん。



止まりたくない。



「千織待てって…」



たくちゃんの声を無視して歩き続け、気づけばもみじの木々で囲まれた場所にきていた。



「千織…!」



グイッと腕を引かれ、反動で体がよろめく。



受け止めたたくちゃんの腕が、震えていた。