私の恋した誘拐犯【完】

「俺に彼女なんているわけねーだろ」



「えぇ?いてもおかしくないでしょ、たくちゃんは」



いるわけないなんて、たくちゃんに限ってそんなことはない。



いないのだとしても、それは陰ながら片思いしてる人が多すぎるんだと思う。



「つか」



パチンパチンと、響く音に紛れるようなたくちゃんの声。



「それ、千織が聞くなよ」



隣から感じる視線に、ふと顔を上げる。



真剣なたくちゃんの目。



まるで、言葉とは別の何かを伝えようとしているようだ。