「私は母上に似てよかったと、つくづく思います」

「そうね。子供たちがふたりとも、容姿だけでも私に似てよかったわ。お父さんに似ちゃったら、かなりゴツくてむさ苦しいもの。それに、あんな大男に似てごらんなさい。男のフェルトはともかく、ノーラなら嫁ぎ先を探すのが大変」

そう言ってニカッと笑う母上は、昔は相当なお転婆だったと聞くけど……そういう問題じゃないと思うな。

とりあえず、枕を直して横になると、母上が傍らの椅子に座った。

「母上。王弟殿下が、私に休むようにとおっしゃったんですか?」

「あの夜、ここにあなたを運んでくださったのが王弟殿下です。近衛兵団の中に、あなたの顔を知っていた人がいたようね」

「ああ、それで……」

正直言って、あまり記憶にない。

私はあの夜から数日、高熱でぶっ倒れていたらしいし。

なんとなーく、水を飲まされた記憶はあるけど曖昧。

近衛兵団は城の内部を、騎士団は城の外を守るのから、おつかいでしか城に行くことがない私が、近衛兵団の姿を見ることはほとんどない。

遠目で見たことがあるって程度。

それなのに、よくわかったよね。

「王弟殿下のお手を煩わせたとすると、父上は相当怒っていたのでは?」

「旦那様の王室至上主義は、筋金入りですからねぇ。でも……それだけではないと思うけれど」

私にかかっていた布団をかけ直し、母上は微笑んだ。

「ゆっくりと休みなさい。休めるときに休むのも、あなたの務めですよ」

そう言って、母上は部屋を出ていった。