「ほぼ、正確な話はわかっていますよ。あなたはウォル殿下の婚約者ではないと。陛下はあなたの父上の親友でもありますからね。ですから、陛下の助言を伝えにきたのですわ」

今度は真剣な顔をする王妃殿下に、私は首を傾げた。

「ウォル様は、本当にあなたをお好きなんですわ。この度、このような事件があって、あなたを守るために王宮内の決まり事を曲げようとさえいたしましたから」

「は……?」

「あの方、あなたがいなくなったのを知った瞬間に、近衛兵を使おうとなさいましたの。近衛兵は王族と城を守るのが基本です。団長とはいえ勝手は許されません」

そこまで厳しい表情で言ってから、王妃殿下はふわりと優しく微笑んだ。

「その後の殿下は、私でも惚れ惚れいたしましたわ。まぁ、内務の大臣たちや騎士団長はあわれでしたけども、すぐにカヌー伯爵家の縁の者の犯行だとわかるやいなや、親衛隊の方と、無理やり連行した騎士たちを引き連れて城を出る姿なんて……」

何故か両手で頬を押さえ、身悶えしている王妃殿下。

「もう、素敵すぎて女官たちと騒いでしまいましたわ。鬼気迫るとは、ああいうことを言うのでしょうねぇ。もう少し若ければ、などと申し上げましたら、陛下に『あなたではウォルの相手は務まらん』と諭されましたが」

えっと、ノロケ? 国王陛下とのノロケ?

いや、違う。問題はそこじゃない。

嬉しいけど、そこまでやってしまったウォル殿下が問題だ。

確かに、私もあの時、ちょっぴりだけ素敵だなって思ってしまったわけだけど、そんな騒ぎになっていたなんて。

「も、もう、私は世間様に顔向けできないのでは……?」

愕然としていると、王妃殿下も楽しそうな様子を消して咳払いする。