「ご、ごめんなさい。安心したら……止まらないみたいで」

申し訳なくて呟くと、私を抱きしめ直してからウォル殿下は息をついた。

「いいんです。私になら、大いに甘えてください。あなたはこんな時にも真面目過ぎる」

「ま、真面目はいけないことでしょうか」

「いいえ。いいことですよ。だが……私の前では気を抜いてもいいんです。そうしてください。私はそうしているので」

そうなんだ?

そう思ったら、今度は別の方角から、別な声が聞こえてくる。

「殿下のそれは、ただ単に、惚れた女の前でニヤついているだけな気がするんですけどね~。いつまでここにいるおつもりですか。ラブシーンはお腹いっぱいですし、奴らはもう捕縛して連行しましたからね」

その声と同時に、まわりのざわめきにも気がついた。

そりゃそうだ、いくらなんでもウォル殿下がひとりで行動するはずがない。

慌てて離れようとしたら、かえって抱き込まれる。

「あのバカは気にしなくても大丈夫です」

「ルドさん以外にも人がいますでしょう? それにここにいてはまた風邪をひきかねません。どこかは存じませんが、城に戻らなくては」

そう言うと、殿下は私からそっと離れてくれる。

だけど、どうしてそんな不思議そうな顔をしているの?