だけど、最近はそれでもいいんじゃないかなって。

本当の本当に、ほんのちょっぴりだけ、たぶん、数ミリくらいの感覚で、そういうのもいいんじゃないかって方向に気持ちが動いている。

「……ウォル様は、私を好きですか?」

「もちろんです。そこは気がついていませんでしたか?」

困ったように眉が下がって、私にまで伝染してくる。

「だって……」

あまりにも突然で、戸惑っちゃうんだもん。

伯爵家の次男坊とのいざこざもなく、ただの侯爵令嬢としていた時だって、私はモテた試しもない。

どちらかというと、しばらく話して“この子でもいいかなぁ”って、妥協されてたような気もするし。

「私は、そんなに魅力的ではないです」

「あなたの魅力は、私だけがわかっていればいい。あなたが他の男がいいと言うのなら、私はなにをするかわかりませんよ?」

それは脅しですか?

思わず瞠目してしまうと、ウォル殿下は明るく笑った。

「それは置いておくとしても、どうせなら私を選んでくださると嬉しい」

じっと見つめられていると恥ずかしい。

だけど、目をそらせずにいたら、彼の顔が近づいてきて、私は目をつむり──


「手を出すのはまだ早いですぞ、殿下!」

荒々しくドアが開いたのと同時に、父上の声が降ってくる。

パチリと目を開いたら、鼻先スレスレにウォル殿下の端正な顔。

ちょっぴりだけ残念そうにしてから、私のおでこにチュッとキスをした。