「堂々としてください。なにがあっても私はあなたの味方です」

「味方……?」

「当然ですよ。妻とはパートナーでしょう? まして、私の妻という立場は、気にしないようにしていても政治が絡みます。なので、私に守られてください」

……驚いた。家族以外で『私を守る』とか言う人は初めてかもしれない。

じわじわと顔が赤らんでくるのがわかるけれど、これは違うんだと思い直す。

素直に嬉しいと思えたら、ありがたいんだけど。

「勘違いかもしれませんでしょう?」

「なにがですか?」

キョトンとした美麗な顔に、真剣な表情で返す。

「あの雪の夜のように命の危険に晒されると、人間は子孫を残したくなると申しますから……」

言った途端に彼はポカンとして、次に吹き出し、何を思ったのかギュッと私を抱きしめた。

苦しいし、身体は密着していて恥ずかしいし、ジタバタもがくけれど男女の力の差は歴然で、ウォル殿下の腕から逃げ出せるはずもなく……。

「ちょ……殿下! なにをなさるんですか! それに、そんなに笑うようなおかしい話ではないです!」

「いやぁ。おかしい話ですよ。確かにノーラは危険な状態でしたが、私は命の危険に晒されたわけではないですから、あてはまりません。でも、あなたとの子でしたら是非とも残したいですね。いや、残しましょう。今すぐでもいいのなら、今すぐ」

「あなたはなにを言ってるの~!」

悲鳴が月夜に響き渡り、慌てふためく私にウォル殿下は破顔した。