考え込んでいたら、殿下の人差し指が、そっと掬うように私の頬を撫でる。

ちょっとくすぐったくて首を竦めたら、どこか嬉しそうに目を細められた。

「ノーラ……踊りましょうか」

「え? こ、ここで、ですか?」

「音楽もありますし、人目もありませんから、見られなくていいでしょう?」

人目がないのはありがたいけど、意味がわかんない。

白い息が出るくらい、寒いんですけど?

「動けば温かくなりますし」

「それは部屋に戻ればいいだけじゃ──」

言いかけた言葉の途中、ウォル殿下は私の手を取ると強引にテラスに連れ出す。

「踊れますよね?」

「もちろん。嗜む程度ではありますが」

ムッとして返事をすると、ウォル殿下はニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべてグイッと私を引き寄せる。

そして、そのまま抱き込まれるようにされて瞬きをした。

遠くから流れてくる曲は、少しだけアップテンポで、舞踏会ではよく演奏されるもの。

私の返事も待たずに、ウォル殿下は私をリードし始めた。

「殿下……?」

くるくると回されながら、戸惑って彼を見上げる。

「楽しみましょう。あなたは少し真面目すぎます」

真面目はいいじゃないか。唇を尖らせるとふっと笑われた。

寒い冬の月夜。誰もいないテラスで踊る私たち。

ちょっぴり滑稽で、どこかおかしい。

まぁ、身体を動かすのは大好きだし。実はダンスも嫌いじゃない。

思わず口もとを緩めると、ウォル殿下も楽しそうにステップを踏む。