不思議そうな顔をしている私に、彼女たちは顔を見合わせた。

「確かに、社交界にデビューしたばかりの娘たちが行くような夜会には、王弟殿下はお越しにならなかったですし、ノーラはご存知ないのかも……」

「あら。王弟殿下の場合、夜会に参加されるのが、ほぼ皆無といってよろしいのではない?」

言われてみれば、夜会の類いでウォル殿下を見たことはないよね。

まぁ、婚約者もいないウォル殿下の場合、嫁ぎ先を漁りに来ている娘たちがいる夜会に現れたら、すごい騒ぎになっていたんじゃないかな。

それなら、私も記憶に残ると思うし……考えてみても、そんな夜会の記憶はないなぁ。

するとエミリアが人差し指を立てた。

「話しかけても無表情。どんな美姫が言い寄っても眉ひとつ動かさず、何事もないように、いつの間にか夜会からいなくなる方……それが王弟殿下よ」

「一度なんて、公爵令嬢が“お誘い”したらしいけれど、冷たい視線で黙っていらしたみたい。公爵令嬢が固まっていたわ」

どんな言われ方だよ。

でも、ウォル殿下って、よく笑うような気がするんだけどなぁ。

ますます不思議そうな顔をすると、エミリアが私の両肩を掴んでクルリと振り向かせる。

「論より証拠よ。よく見てごらんなさいな」