「いろいろございまして」

「素敵~! 氷の王弟殿下が、あんなに笑顔を振り撒いているなんて、天変地異が起こったのかと思いましたわ」

「鉄壁の無表情ですものね! 恋人もいらっしゃらない王弟殿下の氷を、どなたが溶かすのかと噂しておりましたが、我らがノーラがそれをしてのけましたのね!」

……いや。もう、意味がわかんないだけど。

彼女たちは鼻息荒く「馴れ初めはなんですの?」とか、「夜会に参加もなさらないのに、どこで出会ったんですの?」などと、興味津々に詰め寄られて引いた。

一応、かいつまんで王女殿下の失踪事件のことを言うと、みんな納得の表情で頷く。

「私も王女殿下の事件は、噂では聞いておりましたが、まさかあなたが関わっていたなんて……」

「とても、ノーラらしいですわぁ」

「ちょ……っ! 関わっていたなんて人聞きの悪い。単に私が見つけただけではないですか!」

みんなでクスクス笑いながら、それからは互いの近況を伝え合う。

そうしていながら、笑顔が天変地異と呼ばれるウォル殿下のことが気になった。

「……ウォル殿下って、そんなに笑わないんですか?」

なにげない質問だったのに、三姉妹とも一斉に真剣な顔で頷く。

「有名ですわよ。氷の如き孤高の王子様」

それは知っているんだけどさ、なんかウォル殿下に合わない気もするっていうか。