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目を開けて思ったのは『あ。生きてるんだ』である。

生まれて19年。少し行き遅れと言われつつある年齢になったけど、もちろん生きているのはありがたい。

喉はすこぶる痛いけど。

「お前は馬鹿か、それとも阿呆か。王女をお守りしたのは褒めてやる。だが、あの吹雪の夜に、あんな薄着で飛び出すやつがいるか」

枕元で父上の小言は、非常にありがたくない。

「そうだぞ。ノーラ。お前、どうしてあんな馬鹿みたいな格好で出たんだよ。馬鹿だとは思っていたが、本当に馬鹿なのか?」

兄上のあっけらかんとした小言まで聞きたくないし、間違っても兄上に馬鹿とは言われたくない。

「あなたたち! ノーラは病み上がりなんですよ! 何をやってるんですか!」

部屋のドアを開けるなり、私たちの様子を見た母上から怒号が上がって、父上も兄上も身体を固くして、それからしょんぼりとした顔をした。

「母上、父上も兄上も、これでも心配してくださったんです。それに、後先考えずに飛び出したのは間違いないので……」

苦笑しつつ起き上がると、そっと兄上が手を貸してくれて、ヘッドボードに枕を重ねて寄りかからせてくれる。

ブツブツ文句を言うのは予想の範囲内だ。私を心配してくれてるからこそって十分理解してる。

ただ、ふたりともきっと脳みそまで筋肉でできていると思うから、ちょっと“お見舞いにふさわしい言葉”が思い浮かばないだけなんだとも思ってる。

伊達に長年家族はしていなんだ。