呆然としていると、ウォル殿下はまた首を傾げ、なにを思ったのか急に私を抱えあげた。

「ひゃ……っ⁉」

「団長のところに行くのでしょう? 私も向かうところでしたので、ご一緒しましょう」

口をパクパクしている間に馬に乗せられると、背後にヒラリと彼も跨がった。

「で、殿下っ! 畏れ多い。私は歩いて行きますから……」

「構いませんよ。前にも私の馬に乗ったことがあるでしょう? 一度も二度も変わりないです」

そりゃそうだけど、記憶が間違ってなければ、私はあなたの後ろに座ったはず。

しかも、あのときは緊急事態だった。

そのときと今じゃ、状況に差がありすぎるよ!

「それに、同じように騎士団に行くのに、女性を歩かせて、自分たちは馬で向かうのは、少し男としてどうなんでしょう?」

まるで私を抱き込むように、手綱を握りながら彼は苦笑する。

でもさぁ、さすがに気が引けるし、父上に見つかったら怒鳴られそうな予感もするんだよね。

ウォル殿下がいいって言ってるんだから、問題はないんだろうけど。


いろいろ諦めて、ふっとまわりを見ると、近衛兵のさんたちが遠巻きに私たちを眺めていた。

なんだろうと思ったら、比較的普通にしていたひとりが馬を寄せてくる。

さっき、伯爵家の次男坊に注意を入れてくれた人だ。