「…んっ…あっんん」
「…そろそろいくよ?」
「うん…あたしもやばい…」

例え世間から避難されても私はこれでいい。
この関係がいいの。


あの頃はよく、一生大好きだよと言ってくれていた。
同級生の泳斗に一目惚れし、仁海の真っ直ぐなアプローチで付き合うことになった。
けど付き合って2年半過ぎた頃、他に好きな人ができたからと振られってしまった。
もう私のことを好きになってくれないのなら体だけでも満たされたかった。何度でも。
疑似体験と言うとおかしいけれど、体が結ばれた時、心も結ばれたような気がするから。

「…んんっ…泳斗っ…泳斗…」
繋がっている時、仁海は甘い声で無意識かのようにそう囁く。
応えてはくれないが。
「……っ!」
「…っ…気持ちよかったよ。ありがとね泳斗…。」
「………」
「泳斗どしたの?」
「…ごめん!早い内にアフターピル飲んどいてくれないかな。」
「え?それって…失敗してたってこと…?」
「ほんとごめん。今までこんなこと無かったのに…間違いが必ず起こるとは限らないけど念のため絶対飲んどいてくれる?」
「そんな…わかった…。」



(は〜なんか副作用あるらしいから飲みたくなかったんだけどな…)
産婦人科にピルを貰いに行った帰り、玄関のドアの前で偶然蒼鳳と会った。
びっくりしてピルを慌しく落としてしまった。
「あっ」
「ん、なんか落ちたぞ。はい。」
「ありがと。」
急いで隠して部屋の中に入った瞬間、インターホンが鳴った。

蒼鳳だった。
嫌な予感がした。
仁海のことに関しては鋭いのだ。

「それって怪しい物ではないよね?」
「…違うよ」
「…なら見せて」
そして蒼鳳は頑固でしつこい。
逃げられないと思った。
「…これ…やっぱり…緊急用のやつじゃねーかよ。てことは…」
「違うから!違うもん。別に妊娠したわけではないし。万が一のためなだけで!」
「あのさぁ、妊娠しなかったらいいとかそういう事じゃねーよわかってるよな?」
「行くぞ。」
「は?どこによ?」
「アイツの家。」
「は!?ちょっとやめてよ!泳斗に迷惑かけることないでしょ!?」
「泳斗泳斗うるせーよ!!」

あぁ、だめだ。
普段凄く優しくて基本言うことを聞いてくれる(?)けど今はもう拉致があかないわ絶対。

無理やり自転車に乗せられた仁海は、この間の時速の2倍で走る泳斗に軽く恐怖を感じていた…。