「ごめん、急に呼び出したりして…」
「あ!全然大丈夫です!あの…本当に申し訳ないんですけど…どなたですか?」
「雨谷美憂さん。俺は…麻希の…彼氏です」
「えっ!そうなんですか?!」
「まさか知られてないとは思ってなかったけど噂は本当なんだな〜ハハッ」
「うわさ…?」
「美憂ちゃんが春翔しか見てないってコト」
そんな噂が?!恥ずかし!!こんな恥ずかしいコトある?!
噂がたてられるくらい周りにもバレちゃってるんだなぁ…
その分春翔が私を見てないことも伝ってるんだろうなぁ。
バカだよね、こんな報われない恋。
本当思われないってこんなに辛くて寂しくて悲しい。
「あのさ、美憂ちゃん」
「はい……」
「俺に協力してくんない?!」
「協力…?」
「美憂ちゃんも噂で聞いたかな…。俺らうまくいってないんだ。」
あぁ……本当なんだその噂。
嫌な噂だなってずっと思ってた。
春翔がとられるって……
「だから、うまくいくように協力してくんない??美憂ちゃんにも悪い話じゃないと思うんだ」
「……そう、ですかね…」
「そうだよ!俺らが別れたら春翔は絶対麻希と付き合うに決まってる。なんだかんだアイツら好き合ってる」
「っっ……」
他の人から見てもそう思うんなら、私はいくら春翔の隣にいても“彼女”としては見られてないんだ。
バカバカしい、こんなの。
なのにこんなに好きなの…やめられないの。
ーーーでもね、春翔の幸せが私の幸せだよ。
「アイツらを壊したのも俺だし…」
「へっ…?」
「俺さ春翔の彼女だってわかってたんだけど好きでさ…麻希のこと…」
「…はい…」
「麻希にキスしたんだよ。春翔に見えるように」
「えっ…なにして…」
「そしたらアイツらこじれて俺の彼女になったんだ麻希は。…まあヤケクソだろうな」
「ヤケクソ…?」
「“アイツと付き合えばいいだろ!”って言ったらしい春翔は。それで麻希は…」
「……そう、なんですね…」
元々2人は思い合ってたのにこじれた。
好き合ってるのに、うまくいかなくなった。
ーーこれじゃ、私が敵うわけないじゃない。
バカだなぁ…本当、バカ。
春翔もバカなんじゃないの。素直にならないからだよ、春翔。
春翔のそんな素直じゃないところも、不器用な優しさも大好きだけどね。
「あの、お互いやめましょう」
「え?…み、ゆう…ちゃん?」
「私わかりますよ、痛いくらい。…好きな人の視線を独占できない辛さ。思われない辛さ。」
「……っ、でも、さ!」
「いつか思われるって信じてもう1年。いつかってもう来ないんじゃないかな。その話聞いて思っちゃいました」
「美憂ちゃん…、ごめん、こんなこと言っちゃって」
「そんな申し訳なさそうな顔しないで?大丈夫。私はもう慣れてるの」
そう笑ったら尚更辛そうな顔をした。
胸がキシッと音を立てた。
もう耐えられそうにないかなぁ、もう無理かなぁ。思われないのって辛いよなぁ。
おんなじ気持ちでおんなじ痛みをわかってるこの人はよく耐えたね。
「だから、もうやめよう。一緒に、やめて、一緒に頑張ろう」
「……やめれる、かな俺…めちゃくちゃ好きなんだよ本当おかしいよなぁっ…」
「っつ……」
泣いちゃうほど好きなんて、本当おかしくなるよね。
大好き好きで好きで仕方ないのに、一緒に居ても好き合えないなんて。
一方通行の恋なんてただ辛いだけ。