女子高生という人生の中で一番華々しく輝く時代を生きる乙女たちにとって、運動は大敵である。

運動をすれば筋肉がつき、体に硬い鎧をまとっていく。世の「JK」たちはそれを嫌い、”ビジュアル”的に不必要なものとした。

故に動くことを拒んだJKたちは筋肉より、より柔らかい服(脂肪)を着るようになった。

もちろん、授業である体育さえも、女子たちは男子のやる体育の観戦を理由にサボり、そして成長期だからとよく食べる。

言い訳の多い女ほど肥えた体をしているものだ。


女子特有の矛盾がはびこる中、隅田ふみなはグラウンドで一人やる気をみなぎらせていた。

ハンドボール投げは腕力を主に必要とする種目であり、女子にとって、腕が太くなるため絶対に本気でやりたくない体力測定の一つだった。



「っしゃぁぁぁー!23メートル!」ガッツポーズを繰り出し嬉しさを体で表現するふみなは、他の女子と違い半袖短パン姿である。

男子は好奇な目を向ける人や驚く人もいたが、大概は女子の黄色い歓声に呑み込まれてしまう。


ふみなは、女子から絶大な人気を誇っていた。
この黄色い声がその証明であるように、彼女がする種目すべてに女子はついていき、取り囲む。


これだから体力測定は嫌なんだ、とふみなのいるクラスの男子は毎年嘆くのだ。

活発な女子に打ち勝つだけのポテンシャルを持ち合わせていない男子がほとんどで、数少ないふみな同様に女子の歓声を集める男子でさえも、ふみなと対等にやりあう自信はない。

それは、この活発さに加えて、160センチの長身に黒髪ロングのきれいな顔立ちをしていることも、男子よりも輝いてしまう要因の一つだろう。


「ふみなちゃんは相変わらず、ゴツいことすんねー」