「ごめん、先帰る」


ここで小柳と帰っていたら、きっと自分が許せなくなる。
階段を上っていってしまった杠を追いかけてもう1度『帰ろ』さえ言えていれば変わったかもしれない。

でも、あの時、杠は抵抗しなかった。
抵抗してくれなかった。

それだけなのにそれが全てを物語ってる気がして


ただ俺が弱いだけなのにな…


小柳が何か言った気がするが、「また、今度」と力なく笑い返した。