私の彼氏と浮気してください。

瑠斗はしばらく黙っていた。

不思議とその沈黙に対して焦りや不安はなかった。


月を手に入れたいとか、世界征服したいとか、猫になりたいとか、と同じで煎水作氷な願いに戸惑っているのだろう。

お互い不可能だって分かってる。

無慈悲な世界だからきっと今こんなに願ったところで何も変わらないだろう。


でも、瑠斗にだけは届いて欲しい…


微かだったが瑠斗が息を吸い込むのが聞こえてすぐにゆっくり言葉を選ぶように話してくれた。


「どんなに願っても叶わないことはある」