そう言うと再び振り返ってきた。
「ちゃんと洗濯してありますよ。柔軟剤も使って、ふあふあです。って何を言ってるんやろ。まぁとりあえずあっち席空いてるから、座りましょか?」
「はい。」
そう言いながら朝の通勤は始まった。奇妙な偶然の出逢いが。こんなこと、ドラマか、漫画しかないやろってな感じのシーンがここにはある。
僕、この通勤時間どうなるんやろ。
そんな風に思いながら、まだ電車通勤で、地下鉄に揺られて移動していた。

僕は何をこんなに落ち着いてるんや?初対面な、しかも女子高生にこんなに平気に話してる自分に、驚いてる。
しかも、一緒に並んで座って会話してる。夢でも見てるようで。
目の前の女のコが、緊張させないオーラみたいなのを出してるのかな。
とにかく今時の若い女のコで、何かシャンプーというか、香水のいい匂いと、ツインテールがよく似合う。
最近、アイドルで、『釣り師』っていうファンの人達を一発で虜にさせてしまう天性の持ち主、オーラを持つ人が居てるって言ってたけど、それに似てるのかな。
上手な人はすぐに虜にさせてしまう。それにぼくは釣られてしまっているのだろうか?
「今日はなんでそんなに急いでいたの?」
「朝イチで、レポートを提出しなあかんのに、寝坊してしまって、この時間に乗らなきゃ、一時限目に間に合わないんです。いゃぁホンマに間に合って良かったです」
「そうなんや。でも高校生も大変やね。早起きしてね。僕は社会人やから、仕事遅刻できひんから、早起きするけど…」
「えっ?なにをおっしゃってるんですか」
そう言って、女のコは、ぼくの肩を思いっきり叩いてきた。しかも電車の中なのに、少し声を出して笑っている。
それに即気づいたのか、両手で口をおさえて、さらに続けた。
「私高校生じゃありません。いちお女子大生です。いつも周りから幼く見られるんです」
なんてバカ。ごめんなさい。確かに、仕草や、笑顔とか、何処と無く大人っぽい。