「じゃあ桂碁は自分自身の声変わりがきっかけで気づいたってこと?

さっきも言ってたけど…」

「まぁそれも一つのきっかけだったよ」

「それもってことは他にもあるの?」

「ラブライブとアイドルマスターを好きになったのもそうだったよ。

今の俺の夢はアイドルになること。

俺が性同一性障害だって知らない人には驚かれるっていうか、
笑われそうだけど…」

そう言った桂碁の目は空を向いていた。

「この流れで聞くのも変だけど、アイドルってジャニーズ?」

この冬実の問いに桂碁は頭を振った。

「もちろん違うよ。

私が憧れたのはμ’sやアイドルマスターのみんなみたいにきらびやかなドレスに身を包んで、
大きなステージに立って懸命にパフォーマンスをすること。

でもやっぱり、憧れたはいいけどこの通り一応見た目は男だからね。

みんなよりも圧倒的になれる確率は低かった…」

桂碁は思わず『大きなステージ』のところで手を広げていた。