今回も由紀子は公の場で否定し続けた。

次第に彼女の体にも徐々に変化が生じてきていた。

大会が始まる二ヶ月前、彼女は極秘に堕ろすことを決めた。

術後、彼女はお腹に宿っていた命に申し訳なく思った。

そして、決意した。殺してしまった小さな命のためにも次のコンクールは頑張らなければと。


結果は優勝。
見事に彼女は『償い』を果たした。

帰国後、由紀子は記者会見を開いた。

「この二年間、さまざまな憶測など飛び交っていましたが、
私水沢由紀子、二度目の優勝が出来ましたことを心から嬉しく思います。

そして、私は皆様にもう一つご報告があります。

先日の大会を以て引退を決意をいたしました。

本当に、今まで応援してくださった皆様には感謝の言葉しかありません」

三十分ほどの会見だったが、またしても水沢由紀子は日本中を騒がせた。

三年後、彼女は経営学を学んでいた男性と結婚した。

その翌年、今度は無事に女の子を出産した。