気を緩めてしまえば目の端に溢れ出てきそうになるものを、手にぎゅっと力を込めて耐える。



私が彼を想い始めたのは電車の時間をズラしたまさにその日。


彼女が彼の隣に並び始めたのはそこから1ヶ月後。



私の方が早かったよ。

彼と同じ電車に乗るの。



そんな小さくて醜い対抗心でさえも抱いてしまうほどに彼が好き。



視界に入れたくなくて視線を下げても、やっぱり見てしまう。

何度も違う車両に乗ろうとしたのに、その日彼の姿を見なかっただけで気分が下がる。




こんな辛くて永遠に実らない想いは絶対に口にできない。



もし口にしたらあなたは私を避ける?

もしもっと前からあなたを見てたって言ったら引く?

もしあなたの彼女になりたいなんて言ったら私を嫌う?




口にしなけりゃいい。

胸に秘めて、大人しくしてればいい。

初々しいふたりの姿を見て自分を追い詰めて。


そのうち飽きるまであなたを好きでいる。