名前も知らない君。




「うわあ。彼氏のほうも顔面偏差値たけえな」


「だろ?俺ら出る幕ねーよ」


「毎朝一緒に乗ってるのに話しもしないって、何処ぞの恋愛映画かよってな」


「それも顔がいいからこそ出来ることだろー」



隣で僻みを続ける男子高生たち。


そんなふたりの会話をイヤフォンの音量をあげて耳から遠ざける。



視線をあげて、見たくない2人の姿を視線に映す。


私の立つ反対側の扉にただ何をするでもなく並んで立つふたり。

それだけ見ればただの赤の他人のように見えるのに、それはふたりの距離が否定する。



肩が触れ合うか触れ合わないかの距離。

お互い手は繋がないものの、手を下ろして今にも小指同士が触れ合いそう。

よく見ればふたりとも耳まで紅く染められている。




ふたりの空間がそこに存在する。


恋してます、って言わんばかりの雰囲気に胸の内がぎゅうっと何かに締め付けられるように苦しくなる。