夕飯は和食で、料亭の個室だった、例によって全てお任せ、
ただ、店員さんの丁寧な接客からも、かなり格式ある店だと察しられる。

焼き物に、小さくカラフルな料理がいくつも並んでおり、
見た目だけでも楽しめた。

先物から始まり、煮物、揚げ物、メイン、お吸い物など、
料理が入れ替わり運ばれてくる。

「美味しい」

「良かった」

「ランチも美味しかったけど、もちろん洋食と和食の違いはありますが、
まったく違う美味しさですね」

「うん」

「すごく繊細で、技を感るわ」

「そう言ってもらえると、連れてきたかいがあるよ」

「メインはもちろんだけど、お吸い物がこんなに美味しいなんて」

お吸い物は、だしに麩が入っているシンプルな物、
だだ、カツオや昆布で丁寧にだしをとっているのか、全く雑味がない。

「なんか、日本人なんだなって感じます」

お吸い物に感動していると、店員さんが声をかけてくる。

「だしの作りかたは、代々受け継がれている物なので、
そう言ってもらえると嬉しいです」

「やっぱり、特別な物なんですね」

「やはり、だしは料理の味の決め手になりますから」

「味あわせてもらえて、良かったです」

お礼を言っていると、店員さんは、にこやかに一礼して、
個室を去っていく。

ふと、藤沢さんを見ると、嬉しそうに私を眺めていた。

店員さんはだしを褒められて嬉しいかもしれないけど、
どうして藤沢さんが?と思っていると。

「やっぱり、君っていいね」

ますます分からない。



その後観覧車にもう一度乗り、昼間とは違う景色を楽しんだ。

家まで送るという藤沢さんを、駄目と強引に説得し、
朝待ち合わせた駅まで送ってもらう。

再び、少し困った顔をしている。

そんな顔もかわいいですよ、と心の中でだけで思い、最後は笑顔で別れた。