メインのお肉を食べ終わり、海老の料理が運ばれてきた。

「僕の事、嫌いにならない?」

心配そうに聞いてくる。

「ならないわ」

その後、直哉さんはしばらく何も話さない、手も止まったままだ。

しばらくして、ぽつりと言った。

「僕、万里香に好きだと言われた事がない」

「だから、秘密も打ち明けられないの?」

海老を食べようとしてた、フォークを置いて、指輪をしている、左手に重ねる、

「昨日、もうダメっていったの、直哉さんにどきどきして、
耐えれないって思ったからなの」

直哉さんが、私を見る。

「ちゃんと、好きよ」

直哉さんが、その手に右手を重ねる。

「なら、秘密を教えて」

「どうしても?」

少し意地悪心が働いて、聞き返す。

「万里香に秘密があるって聞いてから、仕事に集中できなくて、
きちんとやらなくちゃと思ってやってても、
秘書に間違いが多すぎるって怒られる始末で」

子犬のようにうなだれている。

「大した事じゃないのよ」

「でも、知りたいんだ」

目を見て、真剣に語りかけてくる、
昨日も思ったけど、真剣な表情に弱いのよね。

「高校の時、両親亡くしてから、自炊していたから、そこそこ料理は作れるの」

「それだけ?」

「そうよ」

「ひょっとして、やくさに脅されているとか思ってた?」

雅紀さんに聞いた、お母さんの話をしてみる。

図星だったらしく、直哉さんの目が泳いでいる。

「なら、全然秘密にする事ないのに」

そうねと、手をのけ、中断していた海老の料理にフォークをさす。

直哉さんも、納得いかないという表情をしながら、海老を口にしている。

しばらくして、最後の料理に、シャーベットが出てきた。

「万里香、結婚して下さい」

「もう、婚約指輪もらっているのに」

「ちゃんと、万里香の気持ちが聞きたいんだ」

「よろしくお願いします」

そういってほほ笑む。

直哉さんは、やっとほっとしたようにシャーベットを口にした。

「本当に美味しいね」

「本当ね」

そう言って私もシャーベットを口に含む、
冷たい中にも、甘みが舌全体に広がっていく。

それから、直哉さんは、本当に幸せそうな顔をしていて、
見ているだけで、私も幸せだと感じていた。

「愛しているよ」

「私も」

これも、京子さんの言う、直哉さんのかけひきだったのかな?
やっぱり自分では分からないけれど、
こんなかけひきなら、一生続いてもいい、そう思った。