昼食はいつものように、単品を頼み、雅紀さんはコースを頼んだ。

雅紀さんは、アメフトをやっているかのように、体が大きく、
いつも人当たりのいい笑顔の直哉さんに比べ、あまり表情がなく、
お父さん似だと思わせる。

芸能人を見たいからと言う理由で、家業には関わらず、
テレビ局で働いていると聞かされていた。

マンションは両親が用意した物だが、
それ以上に関しては、家に頼る事もなく、自立した生活を送っている。

「今日は急にすみません」

「いいえ、どうされたのですか?」

「単刀直入に申し上げて、兄に隠し事をされているのですね」

思ってもいなかった話題に驚く。

「ええ」

「兄にはいいません、ただ、僕にだけ教えてもらう事はできませんか?」

「どうしてです?」

「母がまいっているんです」

冷製カッペリーニをフォークにからませながら、ぽつりと話し出しだす、
雅紀さんの話によると。

私に隠し事がある事を、直哉さんより聞いたお母さんが、
とてもショックを受けてしまって、悩んでいる。

私が子供ができない体なのかや、やくざに脅迫されているのかなど、
とんでもない風に、どんどん考えてしまっているらしい。

母は考えだすと、思いつめる所があるから・・・と雅紀さん。

「えっと、申し訳ありません」

「いやいや、話を大ごとにしているのは、兄と母ですから」

「そんな隠し事という程の物でもないんです、
ただ、直哉さんって食事いいお店に連れて行ってくれるでしょう?
なので、料理を作れる事を秘密にしているんです」

「ああ、そうなのですね」

そう言う雅紀さんも、ほっとした表情になり、
心配をかけていたんだなと、申し訳なくなる。

「母にだけ、伝えておきます、
それと、デザート美味しいですよ、いかがですか?」

まったく直哉さんと外見が違うながら、
直哉さんと同じような事をいう雅紀さんに、思わずほほ笑んだのだった。