少しドライブして、喫茶店へ入った。
レトロな感じがしながらも、重厚感があり、店にはレコードがかかり、
独特の音色を奏でている。

この店も何となく入ったのではなく、きちんと調べられていた事が察せられる。

チーズケーキが有名だよという直哉さんの言葉で、
チーズケーキと紅茶をオーダーした。
直哉さんはサイフォンで淹れるという、
こだわりのコーヒーをオーダーしている。

「開けてみて」

さっき買った、指輪の紙袋を渡される。

中には3つ指輪がはいっていて、
1つはさっき付けていた、ダイヤのついた指輪、
後は、シンプルなペアの指輪があった。

直哉さんは、あっさりペアの指輪の一つを取り、自分に付ける、
残りのペアの指輪と、さっき選んだ指輪を、私の左の薬指に付けた。

「結婚指輪と婚約指輪は一緒に付けれるタイプの物にしたんだ」

「結婚式はまだだけど、普段あまり石のついた指輪はしずらいと思ったから、
普段はそちらを付けていたらいいよ」

昨日、シーツを買いに行った時と同じ軽さで、あっさり言われる。

私は何もいえず、じーっと指輪を眺めていた。

そうしているうちに、オーダーした物が運ばれてくる、
食器にもこだわりがあるらしく、同じデザイン、大きさではなく、
私の紅茶はアンティーク風の薔薇の絵が描かれたカップとソーサーだった。

しかし、そんな食器に見入る事なく、視線は指輪に集中している。

「何カラット?」

あまりのダイヤの大きさに、最初に出てきたのは、そんな言葉だった。

「1カラット、あまり大きすぎても、万里香の細い指には合わないし、
その代わり、質は最高の物だよ」

なんでもないかのように、コーヒーを飲みながら、答えていた。

「ほら、紅茶さめちゃうよ、ケーキも食べて」

このサイズで、直哉さんにとっては小さい石だったらしい・・・

無言のまま、やっと紅茶とケーキに手を出す。

それからは、直哉さんが普段の話をするのを、ただ聞いていた。

紅茶とケーキが食べ終わった頃、
ネックレスをプレゼントされた時と同じ気持ちになる。

複雑だが、何も言わないのは自分の性格が許さない。

「ありがとう」

ぽつりと言ったのだが、直哉さんには十分だったらしい。

プロポーズもまだなのにと思っていると、直哉さんは笑顔で言った、

「結婚式場は母さんがが3つぐらいピックアップしてたから」

お母さんと直哉さんは間違いなく親子!心の中で確定する。

どうしよう、昨日から、何度も思っていた事を繰り返した。