その日の午後、直哉さんが行きたい所がある、
ついてきて欲しいと言われたので、一緒に出かける事になった。

やってきたのはジュエリーショップ。
大きなシャンデリアが天井にあり、一歩店に踏み入れただけで、
高級感が漂ってくる。

「もうネックレスはいらないわよ」

パーティの練習の時の記憶がよみがえり、
小声で直哉さんに耳打ちする。

大丈夫と、くすりと笑って、エスコートされる。

予約がしてあったらしく、店員さんに個室に案内された、
ショーケースを見るでもなく、宝石店で個室に行く事にびっくりしたが、
何も言わずついていく。

しばらく、店員さんと話しをした後、店員さんが席を外し、
5つぐらいダイヤのついた指輪を持ってきてた。

「直哉さん」

あせって名前を呼ぶ、
どう考えても、婚約指輪としか思えない。

「ネックレスではないよ」

楽しそうに、手をとり、順番に私の指にはめていく。
そのうち、

「これで」

と一つに決めてしまった。

「それと、昨日見てた指輪と一緒にもらうよ」

店員さんは、かしこまりました、と丁寧に礼をして、席を立つ。

昨日、クッキーを食べた後、直哉さんが出かけていたが、
このショップに来ていたんだ。

「直哉さん」

「駄目だよ、万里香に聞いたら、一生決まらないから」

その通りかもしれないので、何も言えないでいると、
店員さんが、紙袋を持って個室に戻ってきた。

ありがとうと、直哉さんが紙袋を手にとり、個室を後にする、
そして、そのまま店を出たのだった。