藤沢家は社長宅だけあって、インテリアもモダンに統一され、広々としている。
居間にはまきストーブもあり、冬には実際に火も灯すらしい。
もちろん、これは飾り物としての意味合いも強く、
空調は完璧にコントロールできる。

お手伝いさんも住み込みの人が一人、
後は二人程、契約しているお手伝いさんがいる為、
家事など何もする事もない。

服などは、ご両親は繊維関係の商社の社長と専務。
あっと言う間に、元々持っていた服の2倍の量の服が用意されてしまった。

「それとこれ」

2時ぐらい、休憩しましょうと、紅茶を飲んでいると、
お母さんから、指輪の入った小さなケースを手渡された。

「これは、万里香さんの物よ」

そう言って嬉しそうにほほ笑む、

「これは私がおばあ様にもらった物なの」

「そんな大切な物・・・」

「直哉のお嫁さんに受け継いでもらえて、本当にうれしいわ」

お嫁さん・・・

否定するのも申し訳なく、穏やかな表情のまま受け取る、
これは、後で直哉さんに渡しておこう。

部屋に戻り、これで付き合うのやめちゃったら、
どうなるんだろうと考えていると、京子さんからラインが入っていた。

直哉さんの秘書の人に頼まれ、パーティの準備したのは、
私で2人目で、1人目は靴を買わずパーティに出席しなかったので、
直哉さんは16人と付き合ってるけど、特別なのは私だけだって。

てっきり付き合っていたのは14人と思っていたので、
2人増えた事に動揺しつつ、
そこでないでしょと自分に突っ込みをいれていた。

パーティに出たのは、自分だけ。

つまり、両親に紹介したのは私だけという事。

今になって、直哉さんの秘書や先輩が不思議そうな顔をしていた理由が分かる。

私大丈夫かな。

部屋を荒らされた時以上の不安に襲われていた。