寄ったのは高級そうなジュエリーショップ、
店内のショーケースを早足で見て回ると、これをと店員を呼ぶ。

出されたのは大きなダイヤの付いたネックレス、
店員はそのまま私の首に着ける。

藤沢さんは頷くと、店員にあれでと告げ、クレジットカードを差し出していた。
私はあわてて、ネックレスがあったスペースを見る、
値段が書かれた小さなプレートは86万になっていた。

「行こう、レストランの予約に遅れる」

クレジットのサインを終えた藤沢さんは、私に何も言わせないかのように、
背を押し店を後にする。

店を振り返ると、店の外まで出てきた店員が、深くお辞儀をしていた。

あまりのスピードに何も言えなくなっていると、藤沢さんが声をかけてきた。

「欲しいって聞くと、断るだろう?」

つまり確信犯という事。

怒るのも突き抜け、あきれながらも、私の心が出した答えは、
もうどうしょうもない、だった。
すこし逡巡した後、これだけは言っておかないとと思い。

「ありがとう」

と、告げた。