来たのはあの時と同じ体育館裏だった。




何から言い出せばいいかわからなくて沈黙が続く。




先に沈黙を破ったのは、南原さんだった。






「私…。高校に入学した日からずっと奏斗くんが、好き…」





うん。知ってたよ…




「付き合っていないのに、奏斗くんには私のことを見ていて欲しかった。でも…、奏斗くんはあなたにばっかり優しくして…守って…最初は嫉妬だけだった。だけど、悔しくて悔しくてどうしようもなくて、上靴を隠したり、机を隠したりしてしまった…」




だんだん南原さんの声が涙声になってくる。



「うん…」




「橘さんは何も悪くないのに、私いじめてしまった…。謝っても許してもらえないのは分かってる…でも…ほん…とうっにっ、ご、ごめん…なさい…っ」



最後は南原さんの目から大粒の涙がたくさんこぼれ落ちた。



これは嘘じゃない。綺麗な涙。




「南原さん…。私も…ごめんなさい…南原さんの気持ちに気づいて…いたのに…嫌な思い
させて…っほ、んと、うにっ…ごめんね…」




私も最後は涙をこらえることができなかった。



2人でわんわん泣き合う。



「もう…っお互い…謝るのっやめ、よう…?仲良くっ…したい…っ」




私の正直な気持ちだった。





「私のこと…っ…莉子って呼んで…!」




「っうううっ…うんっ…ありがとう…莉子…私も…優衣って呼んでほしい…っ」




「うんっ…優衣…っ!」




この時私は初めて女の子と心が通じ会えた気がした。




人間は過ちを犯してしまう生き物だとよく聞く。



そうだと思う。私も含めて。




だからこそ犯したあとにきちんと謝れば相手との関係を築くことができる。




身をもって実感した。




それに、今なら優衣の嫉妬してしまう気持ちがわかるから。