そんな私に声をかけてくれたのが新庄くんだった。
『別に桜井が怒られないから見込みがないってのは違うと思うぞ。人それぞれ教え方があるだろうし、考え方だって違うんだから。それに、先輩たちだって見込みがないと思っている人間に、あんな丁寧な言い方で根気強く教えてくれないだろ。桜井の直属の先輩は怒って育てるんじゃなくて、優しく諭しながら育てるスタイルなんじゃね?逆に俺なんて怒られるばっかりで自信喪失だよ。不公平だっつうの。だから、桜井はそんな小さいこと気にせず自分のペースで頑張ればいいんだよ。俺も頑張るから』
そう言ってくれた時の笑顔は今でも忘れられない。
新庄くんの一言で、落ち込んでいた気持ちが一気に浮上した。
ただの同期でしかなかったのに、その一件から新庄くんのことを意識するようになった。
然り気無い優しさに触れ、気がついたら惹かれていた。
まぁ、今考えると部活の顧問と会社の先輩を比べること自体が間違ってたんだけどね。
「でしょ?やっぱり私がいないと盛り上がらない感じだよね~」
「調子に乗んな」
新庄くんは、わざとおどけた私の肩を笑いながら軽く小突く。
「じゃ、またあとでな」
「あ、うん」
新庄くんが立ち去る後ろ姿を見て小さくため息を吐いた。
好きな人の前では素直になれず、ついお調子者を装ってしまう。
自分でもなにやってるんだろうと思うことがあるけど。



