「おにぎりを見た瞬間に腹が鳴ったんだ。飯を食っていなかったことに気付いておにぎりの袋を開けてひと口食うと、そのおにぎりが無性に美味くて、一気に三個も平らげた。で、腹が満たされたら妙に頭がスッキリして。さっきまで考えがまとまらなくて悪戦苦闘していたのが嘘のように、スムーズに作業がはかどったんだ。その時に食事って大事なんだなと改めて気づいて、それ以来、飯を抜くことをしなくなった。桜井のお陰だよ」
次の日、スッキリとした表情でありがとなと言われたから、少しは役に立てたのかなと思っていたんだ。
あれからご飯もちゃんと食べていたみたいだし。
よかった、あの時の行動は無駄じゃなかったんだ。
でも“お陰”だなんて言われるほど、大層なことはしていない。
同期として当たり前のことをしただけだ。
「私はなにもしてないよ。おにぎりだって新庄くんはあまり食事をとってなかったみたいだから、お節介かなと思いつつも私が勝手にしたことだし」
「いや、間違いなく桜井のお陰なんだ。実際、あの差し入れをしてもらってから俺は変われたし。いつも然り気ない気遣いに助けられていて、気がついたら桜井のことを目で追うようになっていた」
なにそれ。
そんなこと言われたら勘違いする。
深い意味はないんだと自分に言い聞かせていたら新庄くんは真っ直ぐに私を見つめ、言葉を紡いだ。
「俺は、桜井のことが好きだ」



