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次の日、コピー機に紙をセットしたあと俯いてお腹を触る。
あー、お腹が痛い。
毎月来るこの痛み、もう何年の付き合いだろう。
あまりにも酷い時は薬に頼らなきゃいけない。
「桜井、なにやってるんだ。体調が悪いのか?」
不意に背後から声をかけられた。
振り返ると新庄くんが心配そうな顔で私を見ている。
「いや、体調は悪くないよ」
首を左右に振り、誤魔化す。
体調が悪いのは悪いけど生理痛だから、なんてバカ正直に言える訳がない。
「ふぅん、ならいいけど。それより今日の飲み会、行けるんだろ?」
あ、飲み会か……。
今日は暑気払いと称した飲み会がある。
しかも今回、女子社員の会費は社長が出してくれるということで、これは行くしかないでしょ。
社長は豪快で太っ腹な人で、うちは男性中心の会社だからか、女性社員には特に甘い感じだ。
五十代半ばだけど、すごく若々しくてパワフルな人。
現場にも積極的に足を運び、職人さんにまじって仕事をすることもある。
そのパワーに引っ張られるように社員も懸命に働くようになる。
それがいい相乗効果になり、会社全体も活気に満ち溢れている。
社長の口癖は『若いもんには絶対に負けん!』だ。
今のところ、社長に勝てる社員はいないと思う。
「うん、行けるよ」
「そうか。やっぱ桜井がいないとつまらないからな」
新庄くんは笑みを浮かべながら言う。



