嘘をつく唇に優しいキスを


「なんだよ、早く言えよ」

新庄くんは安堵のため息をつく。
この人はなに言ってるの?

「バカ言わないでよ。無理に決まってるでしょ。彼女がいる人に……」

弱々しく呟く
なんでこんな惨めなことを言わなくちゃいけないんだろう。
これ以上、心がボロボロになってしまう前に早く解放して欲しい。

新庄くんは腕の力を弱めて口を開いた。

「いないよ、彼女なんて」

「へ?」

聞こえたその言葉に耳を疑った。

彼女はいないってどういうこと?
呆然と新庄くんを見つめる。

真剣な表情から冗談を言っているようには見えない。
だけど……。

「さっき一緒にいたのが彼女でしょ」

「違うよ。あれは兄貴の奥さんで俺の幼なじみ。兄貴とケンカしたらしく俺を呼び出したんだよ。で、愚痴を聞きつつコンビニで買い物していただけ。あの後、兄貴に迎えに来るように連絡したから」

いきさつを聞いて一瞬そうなんだとは思ったけど、それでも納得できなくて。

「飲み会でいつも彼女の話をしてたよね?」

「言っとくけど、飲み会の時に俺から彼女の話をしたことは一度もないからな。周りから聞かれたから答えただけ」

「でも、彼女はいたでしょ」

「いたけど、彼女とはすれ違いが続いてかなり前に別れてる」

かなり前っていつ?