嘘をつく唇に優しいキスを


「なに勝手に帰ろうとしてるんだよ」

「離して。帰るから」

あんなことを口走っておいて、ここにいられる訳がない。
必死に抵抗して腕を振っても、新庄くんの手は振り払えない。

「帰す訳ないだろ」

「嫌だ、離してよ」

「離さない」

離して、離さないという押し問答になかなか決着がつかない。

「お願いだから、離して」

「無理。なぁ、さっきの言葉は本当なのか?」

私の願いはアッサリ却下された。
なによ、なんなのよ!

新庄くんに掴まれた腕が熱い。
射抜くような眼差しを向けられ、心臓があり得ない速さで動いている。

もうこうなったらヤケクソだ。
あとには引けないし、なるようになれ!だ。
どうせ知られてしまったんだから、思う存分気持ちをぶちまけてスッキリしようと開き直った。

「あー、そうです。ホントです。彼女がいる新庄くんのことが好きですけど、なにか?」

いつにもまして強気な言葉でその場を乗り越えようとした。
そうでもしなきゃ、まともに立っていられない。
今にもこぼれ落ちそうになる涙を必死に堪える。

「ホントに俺のことが好きなのか?」

「しつこいな。さっきからそうだって言ってるでしょ」

キッと睨みつけると、なぜか新庄くんは私を抱きしめてきた。
突然のことに身体が固まってしまった。