嘘をつく唇に優しいキスを


***

また来てしまった……。
もう二度と来ることはないと思っていた新庄くんの部屋に。

新庄くんたちにバッタリ会い、逃げるようにその場を後にしたのに思わぬアクシデントでこんなことになるなんて……。

傷の消毒をしてもらい、今はコーヒーを飲んでいる。
いや、決して呑気にくつろいでいる訳ではない。
手当てしてもらったあと、帰ろうとしたら阻止されたからだ。

それにしても居心地が悪くて仕方ない。
出来ることなら逃げ出したいぐらいだ。

そういえば、彼女はどうしたんだろう。
私と一緒にいることを知ってるのかな?
そんな私の気持ちをよそに、目の前に座っている新庄くんが口を開く。

「なんで逃げたんだよ」

なんでと言われても、ホントのことを言える訳がない。

「逃げてないよ。電車の時間があるからって言ったでしょ。それを言うなら、どうして新庄くんは私を追いかけてきたの?」

「どうしてって桜井の様子が変だったから気になったんだよ」

気になったとか、そんなこと言わないで欲しい。
私なんかに構わず、新庄くんは彼女のことだけ気にしてればいいのに。

「別に変じゃないよ」

「いや、あの時の桜井は変だった。顔色が悪かったし。追いかけてきてみれば泣いてるし」

「あれは……泣いてないよ。転んで痛かったから少し涙目になっただけだと思うけど」

どうにかして誤魔化した。