「そうだな。おじさんばかりで風船を配るより、麻里奈ちゃんがイベントでやってくれたら子供たちも喜ぶよ」

「部長!おじさんばかりってどういうことですか?俺、まだ二十代ですけど」

町田さんが心外とばかりに部長に抗議すると「言葉のあやだから気にするな」と笑って宥められていた。

今泉部長にあんな風に言われたら断るなんて出来ない。
まぁ、最初から断るという選択肢はないけど。

「分かりました」

「サンキュー、麻里奈ちゃん!また、風船とか必要な物を用意しといてな」

「はい……」

道連れが出来たとばかりに喜んでいる町田さんにジト目を向けた後、会議室を出た。

持っていたお盆を給湯室の棚に置き、ため息をつく。
バルーンアートか……。
そんなに器用じゃないから絶対に風船を割りそうだ。
練習もしないといけないから、大量に風船を購入した方がいいよね。
その辺りは今泉部長と相談しなきゃ。

自分の席に戻ると、早速ネットで調べることにした。
バルーンアートに必要な物をチェックしメモを取っていると、大量の資料の紙を抱えて隣の席に戻ってきた人がいた。

「桜井、悪いけどこの資料を一部ずつまとめといてもらっていいか?」

そう声をかけてきたのは同期の新庄湊。
切れ長の一重でクールに見られがちだけど、実際はそんなことはない。
短く切り揃えられた黒髪は清潔感を醸し出している。